初めて見た聖闘士は酷く冷たい瞳をしていた。
女かと見紛う容姿を持ったその男は、その瞳には全く似合わない紅い聖衣を着ていた。
冷たい瞳・・・
自分よりよっぽど永久凍土から生まれたこの白鳥座の聖衣が似合うのではないだろうか。
そう思わせる程、その男の瞳は冷たかった。
そしてその伏目がちな冷たい瞳が、より一層その男を綺麗に見せていた。
嫌な瞳をした男だ・・・。
まるでただの魂の容れ物の様なその男を一瞥してからステージに上がる。
闘いの最中でもその男の瞳は冷たかった。
時折自分の視界に入ってくるその男は、まるで興味が無いといった瞳でステージを見ていた。
いや、見ていなかったかもしれない。
その瞳はステージを映していただけで、自分の事なんてこれっぽちも見ていなかったのかもしれない。
瞳は男本人が闘っている時でさえ、何を見ているのか判らない程の冷たさを湛えていた。
恐らくこの男は自分が傷つき倒れてもこの瞳の儘なのだろう。
長い睫を震わせる事も無く、その男は闘い続けた。
何かに驚いても何かに途惑ってもその瞳だけは何も感じていない様だった。
本当に見えているのだろうかと疑う程に、男の瞳は冷たく透き通っていた。
アクシア。
男の鎖が黄金色の箱に向かって伸びる。
鎖がそうしたからそうしたのだとでも言いたげな瞳が、箱の背後に現れた影を捉える。
男の瞳が影を映す。
「兄さん…?」
その刹那、男の冷たい瞳に一筋の彩が射した。
ただの魂の容れ物だった男が突然人間に戻る。
感情の泉をたっぷりと湛えたやわらかな眼差し。
今まで感情の欠片も無かった唯の硝子玉が「ヒト」を創った。
「その瞬間 俺はお前に恋をしたのかもしれない。」
そう言った自分を驚きの色と、おどけた表情たっぷりで見つめる瞬の瞳。
「何言ってるの、氷河ったら。」
ころころと微笑む瞬の瞳にあの頃の冷たさはない。
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