ロシアの冬は寒い。
ここで生まれ、ここで育ち、ここで迎えるこの冬も随分体験しているが、寒さばかりは慣れる事が出来なかった。いや、寧ろ慣れたく等なかった。この寒さに慣れてしまったら、二度と春が来なくても平気になってしまいそうな気がする。それは御免被りたいものだ。
金髪に碧い瞳を持つ青年はそんな事を考えながら、足早に公園の中に入っていった。
広大な国立公園の中央広場には立派な噴水があった。その噴水が見える石畳の階段の隅…そこが彼の指定席だった。いつでも彼はそこに座り、モスグリーンのスケッチブックと木炭ケースを開く。それらを使い、彼はその日目に入ったものを気が済むまで描き続けるのだ。数年前から少しも変わらない毎日のスタイル。変った事といえば、日が暮れた後、アルバイトで講師をしている絵画教室に向かい、その後自分の為の美術の夜間学校へ行く、という行程が無くなった事ぐらいだ。
その頃はその頃で、ある意味、充実している毎日を過ごしていたのかもしれない。
彼はまだ冬の深いロシアで春に出会ったのだから。
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